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そよかぜは、放物線を描きながら、まだ見ぬ世界をもとめて、吹きわたる。
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年末の掃除で棚の色を一つ塗り替えた。白く生まれ変わった棚にお気に入りの皿を並べ、一番上にはトルコランプとお香を置いた。壁にはグレース・ケリーが微笑んでいるモノクロ写真を。仕上げに、ココ・シャネルの手だけが撮られたモノクロのポスターを白い額に入れて飾った。新しいお気に入りコーナーの出来上がり。

物を整理していると購入時の気持ちや情景を思い出す。サンフランシスコにある激しい巻き舌で英語を話すロシア人の店で買った、シンデレラの絵が描かれたマトリョーシカ(開けていくと最後はガラスの靴の絵に出会える)。雨に打たれながら自転車で走った土岐市で出会った織部焼の水色の豆皿(お香皿となった)。ローテンブルクのおもちゃ屋で心を惹かれた、銅でできたハートの壁飾り(愛のご利益があると思う)。

私は自分を「物欲の塊」だと自覚している。

年末にある旅番組で買い物の名場面集が放送された。人が買い物をする姿は実に面白い。悩むか即決か。何に心惹かれるのか。それぞれの趣味思考や価値観があらわになっていく。なかでも一番共感できたのはパリの蚤の市で買い物をする女優の石田ゆり子。彼女もまた自称「物欲の塊」だ。靴や雑貨、絵、直感で気に入ったものを次々に購入していく。心を踊らせながら買い物を楽しむ姿がなんとも美しかった。

彼女はこんな言葉を残した。

「買い物はね、必要なんです。生きていくうえで……。お金って紙だから。紙がいっぱいあるか、経験があるか。私は経験に換えていきたい」

ありがとう、ゆり子さん……。大変おこがましいが、自称「物欲の塊」である私たちにとって買い物は、必要なんです。まさにそれ。そのために頑張るんです。こんなことを言っていると、こんまりをはじめ、世界中のミニマリストたちから軽蔑されてしまいそうだが、ひとまずミニマリスト理論は置いておこう。私たちにとって買い物は人生を豊かにすること。

特に旅先でのときめきは格別だ。ときめくモノには必ず物語があり、作り手から買い手に持ち主が変わることで新たなストーリーが綴られる。買い物で必要なのは直感力。すぐに飽きてゴミとなってしまうものは選ばないこと。ときめかないモノは買ってはいけない。常に自分のなかの掟に従って取捨選択をする。それが物欲の塊の責任だ。

新しいお気に入りコーナーを見てひとつ思ったことがある。どれも一人でいる時に購入したものだった。私は何かを決める時、より良い判断ができるのは一人(孤独)の時なのかもしれない。

sakin

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