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そよかぜは、放物線を描きながら、まだ見ぬ世界をもとめて、吹きわたる。
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雪が降る夜に歌うのは、イルカではなく、アダモではなく、うたごえサークルおけらの『たんぽぽ』だ。1976 年に作曲された当時、日本には社会の合理化の波が押し寄せた。成人となり就職を迎えた多くの若者が、あるいは企業戦士の道を選び、あるいは働くことの意義を見失い、反戦フォークに加わった。

そして、このころに生まれたのが、日本でのロストジェネレーションと呼ばれるわたしたちの世代だ。現在 28 歳から 38 歳、つまり、1973 年から 1983 年生まれのわたしが成人となるちょうどそのころ、日本は 1990 年代後半から 2000 年代前半だった。バブル崩壊から始まったおよそ 10 年にわたる日本経済の大不況の只中、同じように多くの若者は歴史の波にのみこまれた。

だから、というわけでもないが、いまの時代に、いまのわたしの胸に響く歌は、AKB48 でもなく、ジャニーズでもなく、ギター一本で、みんなで歌えるフォークソング。だれもが口ずさめる歌は時に大きな力を発揮する。

中でも、歌の力が危機的状況を前にして、人々の力を合わせる手段として有効だと過去多くの危機管理の事例が教えてくれる。2004 年、台風で水没した道に取り残されたバスの上で、乗客は歌を歌って一晩を乗り越えた。2010 年のチリ鉱山での落盤事故でも作業員たちは歌を歌って地下で救出を待ったことは記憶に新しい。困ったとき、人は歌を口にする。

日本が進むべき道を間違えたのだとすれば、道迷いに陥った際のもっとも賢い対処方法がある。間違えた道を進むことを今すぐにやめて、来た道を引き返す。時間が無駄になろうと、労力が無駄になろうと、自分が確実にわかっているところまで勇気を持って引き返すことだ。

いまのわたしたちは無駄を嫌って、ますます道に迷っている。このままいけば、いずれ来た道を引き返すことすらできなくなる。雪がすべての景色をひとしなみにする夜に、ふと歩いてきた道を振り返って、街灯の向こうの闇へ消えてゆく足あとの心細いことよ。


たんぽぽ / 作詞 門倉訣 作曲 堀越浄

 雪の下の 故郷の夜
 冷たい風と土の中で
 青い空を夢に見ながら
 野原に咲いた花だから
 どんな花よりタンポポの
 花をあなたに贈りましょう
 どんな花よりタンポポの
 花をあなたに贈りましょう

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